任務完了
7月7日
内地に戻ってからのバタバタと、
一気に出てきた疲労とで、更新が遅くなりました!
7月5日の夜からまとめて振り返ってみます。
7月5日夜は、船で過ごす最後の夜。
診療所の片付けもそこそこに終わらせ、船内で一番
仲良しの気象予報士さんと2人で飲みました。
その後真っ暗なデッキに出てみると、
海の波しぶきが時々青く光っていました。
夜行虫です!何やら幻想的な光景でした。
北上しているのもあり、気温は低下。
夜は肌寒さを感じました。
7月6日朝にはもう浦賀水道付近で、
左舷側には神奈川、右舷側には千葉の陸が見えます。
しかし、梅雨で空はどんより…。
海の色も、あれだけ青かったのが今は緑褐色です。
都会で育った子供は海の本当の色を知らないのでは…
とちょっと不安になりました。
携帯の電波も入り、たまっていたメールが一気に入ります。
もう診療所の薬などは全部箱に詰めたのですが、
朝から胃が痛いという方が受診。最後まで気は抜けません。
でも、感動したことが1つ。診療所の前のホワイトボードに、
「のべ受診者数は933人でした。
皆様のご健康をお祈りしております!」
と書いていたのですが、いつの間にかどなたか数名が
「お世話になりました ドクターも体に気をつけて」
と書いてくれていたのです。それを見て本当に嬉しさがこみ上げ、
船医をして良かった、心の底からそう思いました。
というわけでのべ受診者数は934人になりました。
船は時間調整をしながらゆっくり進みます。
湾に近付くにつれ、他の船舶も随分と増えてきます。
湾の中は、水先案内人(パイロット)が船の進行の指示を
出すことになっており、パイロットが本船に乗って来られました。
だんだんと高層ビルが見えてきて、横浜ベイブリッジも見えます。
ランドマークタワーもだんだんと大きく見えてきます。
都会色が濃くなるにつれ、帰ってきた、という実感がわいてきます。
そして山下埠頭が見えました。お迎えの人々が手を振っています。
13時すぎ、ついに着岸!船医としての重圧から解放され、
何とも言えない安堵感に包まれました。
着岸の瞬間です
屋上のヘリポートで解散式が始まりましたが、雨足が強くなり、
全体写真撮影後、場所を食堂に変えて式が行われました。
JVの所長さんの最後の挨拶で、実は今回の3ヶ月の間に、
お父様が亡くなられた作業員さんがいたと、打ち明けられました。
その方は、自ら志願して、内地に戻らず船に残って作業を
続けられたそうです。船医としてその事実を知らなかったことを
残念に思いましたが、改めて、船乗りの宿命の重さを感じました。
「船乗りは親の死に目に会えない」とよく言われます。
船に乗って遠くに行ってしまえば、すぐに戻れません。
子供の運動会などにも参加できないお父さんも多いでしょう。
本当に船に関わる仕事というのは、大変な職業ですし、
家族が健康で、理解があってこそ、安心して仕事ができるのだ、
ということを痛感しました。
そしてついに、階段を降り、揺れない大地を踏みしめます。
荷物をまとめ、お世話になった方々に挨拶をし、
着岸した余韻を味わう間もなく、6月10日に緊急搬送された
方のお見舞いに、東京の某病院に向かいました。
病室を訪れると、何とも元気そうな姿が。
気切の穴も閉じられ、会話も流暢で、立ったり歩いたりもでき、
本当にこの方が心肺停止に陥った方なのかと、目を疑うほど、
お元気にされていて、嬉しさで目に涙がにじみました。
冗談も交えながら楽しく会話できることが嬉しくて嬉しくて
たまりませんでした。がっちりと握手を交わし、写真をぱちり。
忘れられない一枚になりそうです。
倒れた時の状況は全く覚えておられませんでしたが、
実は意識がなかった頃に夢を見ておられたそうで、
亡くなったご両親に、「お前はまだこっちに来るな」と言われ、
その瞬間に目が覚め意識が回復したそうです。
今朝、集中治療室から一般病棟に転棟されたとこのようで、
まだヘパリンの点滴をされていましたが、ご本人はもう
地元の病院に移りたいと訴えておられ、主治医と相談中だとか。
「早く次の船に乗りたい」と。またいつか、一緒の船に乗って
この方のごはんを食べさせて頂くことが目下の夢です。
そして、単行本出版でお世話になっている羊土社さんが
病院から地下鉄で2駅と近かったため、帰りに編集部を訪問。
編集部の皆さんと写真を撮るの忘れていたのがやや後悔…
でも編集部の皆さんにはとても親切にして頂き、
この場を借りて改めてお礼を申し上げたいと思います。
こうして、今回の船医の任務が終了しました。
揺れない生活に若干の違和感を覚えます。
水道の蛇口をひねればいつでも透明な水が出てくる、
普段当たり前に思っていることが、今はすごく有り難く思います。
常に携帯電話を携帯していないといけない生活にまた戻ります。
この1ヶ月は本当にあっという間でした。
でも、色々なことを経験し、船医としての課題も見えてきましたし、
収穫の多い1ヶ月であったと思います。
ブログを通じて、皆さんにも大変励まされました。
本当に有り難うございました!
ブログは…、なかなか毎日更新は難しいかもしれませんが、
時々は更新し、次回の船医の機会(2年後?)まで繋げたい、
と思っています。これからもどうか宜しくお願い致します!
追伸:
7月18日福井救急総合診療研究会(15時〜福井県自治会館)
にて、今回の船上心肺停止についての症例発表があるそうです。
ちなみに発表担当は「Dr.T」先生です。



